損益分岐点と限界利益の重要性

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はじめに

損益分岐点とは、企業の売上が固定費と変動費を合わせた総コストをカバーするために必要な最低限の売上高を示すポイントです。この点を超えた売上から初めて利益が生まれるため、企業の収益性を把握するための重要な指標となります。

例えば、あるカフェの毎月の固定費(家賃や人件費など)が50万円で、コーヒー1杯の販売価格が500円、原価が200円(変動費)だとします。この場合、1杯ごとの貢献利益は300円です。損益分岐点に達するには、最低でも約1,667杯(50万円 ÷ 300円)を売る必要があります。これが損益分岐点です。

値引きによる売上目標達成の影響

売上目標を達成するために値引きを行うことがあります。しかし、値引きを行うと、1杯あたりの貢献利益が減少し、損益分岐点を超えるために売らなければならない数が増えます。

例えば、同じカフェで、500円のコーヒーを450円に値引きしたとしましょう。変動費は200円のままですから、1杯あたりの貢献利益は250円になります。この場合、損益分岐点に達するためには、50万円を250円で割ると、2,000杯を売る必要があります。

つまり、値引きによって、損益分岐点を超えるために必要な売上数量が増えてしまうのです。これにより、値引きが一時的に売上を伸ばすことができても、全体の利益が減少する可能性があります。

闇雲な値引きによるリスク

闇雲に値引きを行うと、原価率(売上に対する変動費の割合)が上昇します。これは、多くの経営者が見落としがちなポイントです。

たとえば、先ほどのカフェで450円に値引きした場合、原価率は200円 ÷ 450円 = 約44.4%になります。値引き前の原価率は200円 ÷ 500円 = 40%でした。値引きをすることで、原価率が高くなり、利益率が低下してしまうことがわかります。

多くの経営者が、この原価率の変動に気づかず、値引きを続けることで、企業全体の収益性を下げてしまうリスクがあります。

限界利益の重要性

限界利益とは

限界利益とは、売上から変動費を差し引いた金額のことです。これは、売上が増えたときに追加で得られる利益を示し、企業がどれだけの利益を生み出せるかを直接的に表します。限界利益は、企業の実際の利益獲得能力を示すため、経営の意思決定や戦略立案において非常に重要な指標です。

1. 意思決定の基準

限界利益は、どの製品やサービスが企業にとって最も収益性が高いかを示す指標です。例えば、複数の製品ラインを持つ企業であれば、それぞれの製品の限界利益を比較することで、どの製品にリソースを集中させるべきかを判断できます。損益分岐点では、すべての製品が一律に重要だと見なされがちですが、限界利益を考慮することで、より収益性の高い製品に焦点を当てることができます。

2. 価格設定の最適化

価格設定の際にも、限界利益は重要な指標となります。価格を上げることで限界利益が増える場合、売上数量が多少減っても全体の利益は増加する可能性があります。一方で、価格を下げることで限界利益が減少すると、たとえ売上数量が増加しても全体の利益が減るリスクがあります。このように、価格戦略を策定する際に、限界利益を意識することが利益最大化につながります。

具体例として、カフェで提供される3つのメニューを見てみましょう。

  1. サンドイッチ
  • 販売価格:700円
  • 変動費:200円
  • 固定費:300円
  • 限界利益:700円 – 200円 = 500円
  • 純利益(販売価格−変動費−固定費):700円 – 200円 – 300円 = 200円
  • 限界利益率:500円 ÷ 700円 = 71.4%
  1. ナポリタン
  • 販売価格:900円
  • 変動費:500円
  • 固定費:100円
  • 限界利益:900円 – 500円 = 400円
  • 純利益(販売価格−変動費−固定費):900円 – 500円 – 100円 = 300円
  • 限界利益率:400円 ÷ 900円 = 44.4%
  1. カレー
  • 販売価格:1,000円
  • 変動費:300円
  • 固定費:500円
  • 限界利益:1,000円 – 300円 = 700円
  • 純利益(販売価格−変動費−固定費):1,000円 – 300円 – 500円 = 200円
  • 限界利益率:700円 ÷ 1,000円 = 70.0%

この場合、サンドイッチとカレーは最終的な純利益が同じですが、限界利益率が異なります。限界利益率が高いほど、売上の増加が直接的に利益の増加に結びつくことを理解することが重要です。

純利益だけを見るとナポリタンが稼ぎ頭に見えますが、限界利益率を見ると、ナポリタンはお店の経営にとってはそれほど貢献していないことがわかります。限界利益率が低い商品は、売上が増えても利益が大きく伸びないため、経営の観点からは効果的ではありません。

純利益だけでは判断できない利益を残すコツ

ナポリタンは現時点で限界利益率が低く、お店全体の利益にはあまり貢献していないように見えますが、変動費を見直すことで状況は大きく変わります。例えば、仕入れ先との交渉によって原材料費を削減したり、調理プロセスを効率化することで変動費を下げることができれば、限界利益率を大幅に改善することが可能です。

変動費が下がれば、限界利益が増加し、同じ販売価格でも利益が大きくなります。これにより、ナポリタンがサンドイッチやカレーと並ぶ、あるいはそれ以上の稼ぎ頭となる可能性があります。純利益だけでは判断できない要素に注目し、変動費を含めた全体的なコスト管理を行うことが、持続的な利益を確保するための重要なポイントです。

固定費の削減 vs 変動費の削減

固定費の削減は、短期的には経費を減らす有効な手段ですが、変動費の削減、すなわち限界利益率の向上は、長期的により効果的な利益増加策となります。以下に具体例を挙げます。

例えば、カフェの固定費が月50万円、変動費が1杯あたり200円のコーヒーを考えます。固定費を10%削減し、45万円にすると、損益分岐点を達成するために必要な売上数量は約1,500杯に減ります(45万円 ÷ 300円)。これは一見良さそうですが、限界利益率に対する影響は限定的です。

一方、変動費を10%削減し、1杯あたりの原価を180円にすると、限界利益は320円に増加し、損益分岐点を達成するために必要な売上数量は約1,563杯(50万円 ÷ 320円)になります。さらに、損益分岐点を超えた後の利益は、固定費を削減した場合よりも急速に増加します。これは、売上が増加するたびにより多くの利益が得られるからです。

このように、固定費の削減よりも変動費の削減を通じて限界利益率を高めることが、長期的により高い利益をもたらす効果的な方法となります。

3. 新規事業や投資の判断

新規事業を立ち上げる際や追加投資を行う際、限界利益が高い事業や投資先を選ぶことで、初期投資回収の速度を速め、早期に利益を確保することができます。損益分岐点を超えることだけを目標にすると、収益性の低い事業に資源を投じてしまうリスクがありますが、限界利益を重視することで、リスクとリターンのバランスを適切に取ることが可能になります。

4. コスト管理の視点

限界利益を考慮すると、変動費の管理が一層重要になります。変動費を削減することで、限界利益を増加させ、より少ない売上でも高い利益を得られる可能性が高まります。例えば、サプライヤーとの価格交渉や生産効率の改善など、コスト削減施策が直接的に利益に結びつきます。

結論

損益分岐点を超えれば利益が出るというのは事実ですが、その後の利益を最大化するためには、限界利益を意識した経営が不可欠です。限界利益を重視することで、より効果的な経営戦略を立て、利益を最大化し、企業の持続的な成長を実現することができます。

また、固定費の削減に加えて、変動費を削減し限界利益率を上げることが、長期的な利益を確保するために最も効果的なアプローチです。粗利だけを見て判断するのではなく、限界利益率を含めた総合的な視点でメニューやサービスの収益性を評価することが、成功するためのカギとなります。

カレーやサンドイッチのように限界利益率が高いメニューを積極的に展開することで、売上が直接利益につながりやすくなり、経営の安定性を高めることができるでしょう。この文章を通じて、限界利益の重要性とその活用方法を理解し、それを経営戦略にどう活かすかについて学んでいただけることを願っています。


さいごに


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