テナント物件をご案内していると、
「この物件、飲食店できますか?」
「美容室でも大丈夫ですか?」
「この場所で福祉事業所を開業できますか?」
といった質問をよくいただきます。
物件資料に「店舗可」「飲食可」と書いてあったり、管理会社から「その業種でも大丈夫ですよ」と言われたりすると、そのまま営業できるように思われるかもしれません。
しかし実際には、「物件を借りられること」と「そこで希望する事業を営業できること」は別です。
家主様の承諾だけではなく、業種によっては保健所や消防、用途地域、建物の状況など、契約前に確認しておかなければならないことがあります。
今回は、私がテナント仲介をする際に確認していることを書いてみたいと思います。
管理会社がOKでも、家主様から断られることがあります
まず意外とあるのが、
「管理会社に業種を伝えて大丈夫と言われたので申し込んだのに、家主様から承諾をもらえなかった」
というケースです。
例えば、家主様自身が同じ業種の仕事をされている場合。
また、同じビルには競合店が入っていなくても、隣のビルに同業者がいて、その家主様と親しいなどの理由からNGになることもあります。
これは募集図面だけを見ていても分かりません。
そのため、管理会社から「大丈夫だと思います」と言われても、最終的には家主様の承諾が必要になります。
「申込みができる」と「家主様から承諾される」は同じではありません。
ここは開業される方にも理解していただきたいところです。
「何でも大丈夫ですよ」という物件ほど慎重に確認します
管理会社から、「飲食でも何でも大丈夫ですよ」と言われることもあります。
一見すると、とても借りやすい物件に感じます。
ただ私は、そういう物件だからこそ、起こりそうな問題を事前に考えるようにしています。
例えば飲食店であれば、臭いや煙。
開店してから近隣から、「臭いがする」「煙が入ってくる」と苦情が出る可能性があります。
契約前は「飲食店OK」と言われていても、実際にクレームが発生すれば借主側で対応を求められることもあります。
だから、臭いや煙が多く出る業態なら、「ダクトを屋上まで上げた方がいいのではないか」など、開業後に考えられる問題についても事前にお客様へお伝えします。
許可されているかだけではなく、営業を始めたあとに何が起こる可能性があるのか。
そこまで考えて物件を見ることが大切だと思います。
飲食店なら保健所への確認も必要です
飲食店を開業する場合には、保健所の営業許可が必要になります。
当社では、お客様に店内の写真や図面などを持って保健所へ相談に行っていただき、希望する営業ができるかを事前に確認していただきます。
当社で店舗改装工事まで担当する場合には、保健所の基準を確認しながら工事担当者とも打ち合わせをして、営業許可の取得に支障が出ないように進めます。
せっかくテナントを契約して、多額の費用をかけて改装したあとに、「この状態では営業許可が取れません」となってしまっては大変です。
だからこそ、契約や工事の前に確認することが重要です。
消防設備は思った以上に費用がかかることがあります
消防についても注意が必要です。
消防設備は、建物や業種、利用人数などによって必要になるものが変わります。
場合によっては自動火災報知設備などが必要になり、想定していなかった費用が発生することもあります。
「テナントの中をきれいに改装すれば営業できる」というわけではありません。
消防設備について借主側で設置や対応が必要になるケースもあるため、当社ではこうした可能性についても事前にお客様へお話しするようにしています。
福祉関係の事業所は特に事前確認が大切です
私がテナント仲介をしていて、特に確認に苦労することがあるのが福祉関係の事業所です。
事業内容によっては、建物の建築確認や検査済証などについて確認を求められることがあります。
さらに、自治体や事業内容によって確認事項や取扱いが異なる場合があります。
そのため当社では、お客様にも開設する事業の担当行政窓口へ事前に相談していただきます。
それと並行して、当社でも必要に応じて建築計画概要書などを取得し、建物について確認します。
良さそうな物件を見つけてから、「ここで福祉事業所をやりたいです」と申し込んでも、行政上の条件を満たせなければ開業できない可能性があります。
だから私は、物件の申込みと並行して行政への確認を進めることが大切だと考えています。
動物病院やトリミングサロンでは用途地域にも注意
業種によっては、用途地域の確認も必要になります。
例えば動物病院やトリミングサロンなどです。
お客様がとても気に入った物件でも、その業種で利用できない地域であれば進めることはできません。
当社でも用途地域などを確認し、難しいと判断した場合には、その理由をきちんと説明して別の物件を探します。
「せっかく気に入っているから、とりあえず申し込んでみましょう」とはしません。
後になって営業できないことが分かる方が、お客様にとって大きな損失になるからです。
美容室なら電気容量も確認しておきたい
美容室の場合には、電気容量もチェックポイントの一つです。
ドライヤーをはじめ、店内では複数の電気機器を同時に使用します。
物件そのものは美容室として使えそうでも、必要な電気容量が確保できなければ、追加工事などが必要になる可能性があります。
そのため、ブレーカーや電気容量についても、契約前にお客様側で確認していただくようにしています。
学習塾なら「送り迎え」まで考える
学習塾では、建物の中だけを見ていてはいけません。
授業が終わる時間になると、保護者の方がお子様を車で迎えに来ることがあります。自転車で通う生徒さんもいるでしょう。
すると、「迎えの車が道路に並んでいる」「自転車が周辺にあふれている」といったことから近隣トラブルになる可能性があります。
そのため学習塾であれば、周辺に駐車場があるか、建物の前に乗り降りできるスペースがあるか、自転車を置く場所があるかなども確認します。
バーなら店内だけ防音しても終わりではありません
バーなど夜間営業のお店では騒音にも注意します。
もちろん店内の防音は大切です。
しかし、お客様がお酒を飲んで店を出たあと、建物の前で大きな声で話すこともあります。
店内の防音工事を完璧にしていても、店の外で発生する音までは防音できません。
特に周辺に住宅がある物件では、営業時間や退店時の騒音まで考えておく必要があります。
良い物件を見つけたときほど、一つずつ確認する
テナント物件を探していて、「ここだ!」と思える物件に出会うことがあります。
立地もいい。家賃も予算内。店のイメージにも合っている。
そんなときほど、早く契約したくなるものです。
でも一度立ち止まって、
家主様の承諾は取れるのか。
希望する業種の許認可は取れるのか。
用途地域に問題はないのか。
消防設備は大丈夫なのか。
電気容量や建物設備は足りているのか。
営業を始めたあと、近隣とトラブルになりそうなことはないか。
一つずつ確認してから進めることが大切です。
不動産会社が「この物件なら契約できます」と言うことと、「この物件で安心して商売を続けられます」ということは同じではありません。
良い物件だと思ったときこそ、許認可、用途地域、家主様の承諾、設備、そして開業後に起こり得る問題まできちんと確認する。
遠回りに見えても、それが結果的には安心して開業するための一番の近道だと私は思っています。

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