私がこれまで不動産の売却に携わってきた中で、意外と多いのが、自宅を購入した当時の書類が残っていないケースです。
「家の場所も分かっているし、自分名義だから大丈夫」と思われるかもしれません。
しかし、実際に不動産を売却することになったとき、昔の書類が重要になることがあります。
たとえば、
- 購入したときの売買契約書
- 建築確認に関する書類
- 建物の図面
- 測量図や境界に関する書類
- リフォームや増改築をしたときの資料
などです。
こうした書類が残っていると、売却するときに物件の内容を確認しやすくなります。
特に大切なのが「購入したときの金額が分かる資料」
もう一つ、不動産を売却するときに重要になるのが税金です。
不動産を売却して利益が出た場合には、譲渡所得に対して税金がかかることがあります。
その計算をする際に重要になるのが、**「その不動産をいくらで取得したのか」**という記録です。
ところが、何十年も前に購入した自宅では、売買契約書などが見つからないことが珍しくありません。
取得費が分からない場合には、一定のルールにより売却代金の5%を概算取得費として計算する方法があります。そのため、本当は購入価格のほうが高く、実質的には利益が出ていなかったとしても、それを証明できる資料がないことで税負担が大きくなる可能性があります。
もちろん、売買契約書がないからといって必ず税金を払わなければならないわけではなく、ほかの資料から取得費を確認できる場合もあります。
それでも、昔の売買契約書を残しておくことには大きな意味があります。
これは私自身、不動産の売却に携わる中で何度も感じてきたことです。
親に「財産はいくらあるの?」とは聞きにくい
相続について考えるとき、子どもの側から親に、
「どんな財産を持っているの?」
「預金はいくらあるの?」
「株は持っているの?」
と聞くのは、なかなか難しいものだと思います。
親が元気であればあるほど、「まだそんな話をしなくてもいい」と感じるご家庭もあるでしょう。
だからこそ、私は子どもから聞き出すことだけが相続準備ではないと思っています。
この記事をご覧になっている不動産所有者の方には、ご自身の意思がはっきりしているうちに、まず自分が持っている資産を書き出してみていただきたいと思います。
誰に何を相続させるかを、今すぐ決める必要はありません。
まずは、「自分には何があるのか」を整理することから始める。
それだけでも大きな一歩ではないでしょうか。
不動産だけでなく預貯金や株式についても
資産の棚卸しは不動産だけではありません。
銀行口座についても、一つだけではなく複数の金融機関に口座を持っている方は多いと思います。
どこの銀行に口座があるのか。
通帳やキャッシュカードはどこにあるのか。
届出印など必要なものはどこに保管しているのか。
こうした情報についても、分かるように整理しておくことが大切です。
また最近では、株式などの金融資産も電子化されており、昔のように株券を探せば分かるというものではありません。
そのため、少なくとも**「どこの証券会社に口座があるのか」**が家族に分かるようにしておくことも重要です。
なお、インターネットバンキングや証券会社のID・パスワードそのものを誰でも見られる場所に書き残すことにはセキュリティ上の問題があります。
「利用している金融機関・証券会社の一覧」と「重要な情報をどのように管理しているのか」を、家族が必要なときに確認できる形にしておくのがよいでしょう。
最初にすることは「分け方」ではなく「棚卸し」
相続というと、
「誰に何を残すのか」
「兄弟でどう分けるのか」
という話から考えてしまいがちです。
しかし、その前にやるべきことがあります。
そもそも自分は何を持っているのか。
実家や土地は誰の名義なのか。
購入したときの契約書は残っているのか。
銀行口座はどこにあるのか。
証券会社はどこを利用しているのか。
まずは、それらを書き出してみる。
私は不動産の仕事を通じて、元気なうちにしておく資産の棚卸しも、家族にできる大切な準備の一つではないかと感じています。

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