重要事項説明について

重要事項説明について

物件契約前に不動産仲介会社は宅地建物取引士が契約者に対して重要事項説明をしなければなりません。これまでは対面で行わなければなりませんでしたが、法改正によってオンラインでの説明も可能となりました。ここでは重要事項説明において大切なポイントについて説明致します。

重要事項説明の意義

 宅建業者は、売買・賃貸の契約が成立するまでの間に、書面を交付し、買主・借主に対し、宅地建物取引士をして一定の重要な事項の説明をさせなければなりません(宅地建物取引業35条)。これが重要事項説明の義務です。宅建業法上、宅建業者が業務を行うにあたっての、最も基本的にして大事な義務ということができます。

 重要事項説明は、買主・借主が購入や賃借の前に宅地建物とその取引条件に関する重要事項を理解し、十分な情報を得た上で購入や賃借をするかどうかを判断できるようにするための説明です。仮に買主・借主が説明を受けることを望まなかったとしても、説明を省いてはなりません。

 重要事項説明は普段聞かない単語、言い回しで説明がなされますので退屈で眠たくなりますが必ず一語一句聞き逃さないようにしましょう。その中でも重要だと思われることを10個挙げてみました。

事業用普通建物賃貸借契約における重要事項説明の記載事項と大切なポイントを以下に示します。

1. **契約当事者の特定**:

   – 貸主および借主の氏名(法人名)、住所、連絡先を明確に記載しています。実際の所有者と貸主が違う場合があります。

例)

・所有者が法人、貸主が法人の代表者

・所有者が親子、兄弟で複数、貸主はその代表者1名

・転貸によるもの

2. **賃貸借物件の特定**:

   – 物件の所在地、構造、面積などの詳細情報を記載しています。

3. **賃貸借期間**:

   – 賃貸借契約の開始日と終了日を明記しています。また、更新の有無や更新方法も記載します。

賃貸借契約の種類では普通建物賃貸借契約と定期借家契約のいづれかになりますので確認しておきましょう。

4. **賃料と支払い方法**:

   – 賃料の金額、支払期日、支払方法(銀行振込、現金など)を明記します。遅延時の対応も含めます。自動振替、振込、現金持参など方法は貸主や管理会社によって異なります。

5. **敷金・保証金**:

   – 敷金や保証金の金額、その保管方法、返還条件を明確にします。

6. **ハザードマップ**:

   このパートは近年の法改正によって必ずハザードマップを提示して説明をしなければなりません。洪水、内水、土砂災害、津波、高潮等の危険性があるかどうかについて説明を受けましょう。またエリアに入っていないとしても近隣が危険区域であれば可能性はゼロではないのでいつ災害が起こっても対応できるように対策の検討と火災保険に浸水の補償が含まれるかを確認しておきましょう。

7. **修繕と原状回復**:

   – 修繕の範囲と負担者、契約終了時の原状回復の範囲と方法を明記しています。退去時にそのまま出ていってよいのか、それとも借りた時の状態にまで戻さないといけないのか、あるいはスケルトンといって、内装工作物の一切を解体撤去しなければならないのかを確認しておきましょう。この項目は退去時にトラブルになりやすい事項です。不動産会社が曖昧に濁した場合は流されずにしっかりと文章に残して(特約に付記や覚書の締結)もらうようにしましょう。

8. **使用目的と使用制限**:

   – 物件の使用目的(店舗、オフィスなど)と使用に関する制限事項(騒音、振動、危険物の取り扱いなど)を記載しています。基本的には貸主が承諾した目的以外での利用はできません。途中で業態変更をする時は必ず貸主の承諾を取るようにしましょう。また、貸主が承諾した場合でも、近隣や他の階からクレームがくる場合があります。例としては重飲食店での煙や臭い、スナックやカラオケ喫茶店での音の問題が考えられますので、対策をしっかり行うようにしましょう。また、貸主が承諾したとしても行政から用途違反として是正を求められる場合があります。普通建物賃貸借契約では用途地域は重要事項説明書の記載事項に含まれていませんが、ここも不動産会社に確認するか、またはご自身で市役所の開発審査課にいって、当該建物がある場所の用途地域を確認しましょう。そしてこれからやりたい業種を説明して、そこでやってもよいか確認しましょう。この時に後から言った言わないの論争にならないためにも担当の部署と担当した方の名前はメモしておくとよいです。

9. **解約条件**:

   – 中途解約の条件、解約予告期間、違約金の有無とその金額を明記しています。ここでは借主からの解約が何ヶ月前からなのか、そして期間内解約の場合の違約金があるかどうかしっかり確認しましょう。

10. **特約事項**:

    – 契約書に記載された内容以外の特約事項がある場合、その詳細を明記しています。特約事項は契約書の有効部分となります。

トラブルが多い事例としては、契約後に設備の不備などで連絡を貸主や管理会社にしたが修繕を断られるケースです。しかしこれは重要事項説明書と契約書にはっきりと「当該貸室の設備什器の一切は前入居者の残置物とし、故障や不具合による修理メンテナンスの一切は借主の負担と責任においておこなうものとする。」となどと書かれていることが多いです。住居と違って事業用の賃貸物件の場合、設備についての修理は貸主負担というわけではありません。勝手な思い込みをせずに費用負担はどちらなのか確認しておきましょう。

以上が重要事項説明におけるチェックポイント10個です。重ね重ね言いますが、前提は全て大切で省略はできません。その中でも重要だと思うポイントについて私自身の経験も踏まえて紹介しました。

これらのポイントは、賃貸借契約をスムーズに進め、双方の権利と義務を明確にするために重要です。契約前に全ての事項を確認し、不明点があれば貸主または不動産会社に相談することが推奨されます。

参照

重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧

国土交通省 重要事項説明制度の概要

過去の記事

開業スケジュールについて

記事を書いた人

エンラージ株式会社 

代表取締役 上領貴文

不動産業界歴17年

取得資格 宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー2級、TOEIC695 

趣味 ギター、英会話、山登り、魚釣り、料理

山口県出身で大学進学時に大阪府枚方市に移住、大学在学時にオーストラリアヴィクトリア州メルボルンに語学留学、30歳で独立開業。現在は不動産会社、鍵屋を経営。

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