ここ数年、仕入価格や外注費、燃料費など、会社を運営するためのさまざまな費用が上がっています。
私自身、エンラージを経営する中で、改めて『適正な価格とは何だろう』と考える出来事がありました。
鍵交換の価格を見直して気づいたこと
当社では、不動産会社としての仕事とは別に、管理会社様向けの鍵交換も行っています。
ここ数年、鍵の仕入価格は一度ではなく、何度か値上がりしました。それでも当社では、できるだけこれまでの価格を維持して仕事を続けてきました。
ところが、あるとき改めて原価と利益を計算してみると、『この金額なら、やらない方がましなのではないか』と思うほど、仕事として成り立ちにくい状態になっていることに気づきました。
そこで価格を見直しました。実質的には値上げですが、私としては『値上げをした』というより、現在の仕入価格や必要な経費を踏まえ、適正な価格水準に合わせたという感覚です。
もっと利益を増やしたいからではありません。仕事としてこれからも続けていくためには、適正な利益をいただく必要があると考えたからです。
安さだけで選ばれる会社にはしたくない
価格を見直したからといって、『仕事をいただけなくなるのではないか』という不安は、あまりありませんでした。
周囲の価格と比較しても、決して高すぎる金額ではなく、適正な水準だと考えているからです。
当社は母体が不動産会社ですので、鍵交換だけで大きな利益を上げようとは考えていません。ただ、仕事として引き受ける以上、赤字に近い価格で続けることも違うと思っています。
そして適正な価格で仕事をして、それでも他社を選ばれるのであれば、その会社のサービスの方がお客様にとって魅力的だったということです。そのときは価格のせいにするのではなく、自分たちのサービスや努力をもっと高める必要があると思っています。
自分が発注する側になっても同じです
これは下請けとして仕事をするときだけの話ではありません。
当社が店舗改装などを請け負い、リフォーム会社や職人さんへ仕事をお願いする立場になることもあります。そうした外注費も以前より上がる傾向にあります。
当然、当社も会社として必要な利益を確保しなければなりません。そのため、お客様へ提示する価格も以前とまったく同じというわけにはいかなくなります。
また、車で現場を回る仕事ですから、ガソリンなどの移動コストも無視できません。
一つ一つは小さな上昇でも、会社全体で見れば固定費や変動費が増え、以前と同じ売上でも残る利益は変わってきます。
つまり、以前と同じ経営を続けているだけでは、会社の損益分岐点が上がっていることに気づかない可能性があります。
売上が増えても、利益が増えるとは限らない
お客様が少ないときに、ついやってしまいがちなのが値引きだと思います。
価格を下げれば、お客様が増えることはあるでしょう。
しかし、お客様が増えれば、その分だけ仕事量も増えます。場合によっては人を増やしたり、営業時間を延ばしたりする必要が出てきます。
すると、売上は増えているのに、人件費などの経費も増え、実際の粗利は以前より悪くなっていた、ということも考えられます。
経営していると、売上の数字には目が行きやすいものです。私自身も同じです。
だからこそ、ときどき立ち止まって、『この仕事で実際にいくら残っているのか』を確認することが大切だと思います。
価格を下げる前に、自分たちの良さを伝える
では、お客様が少ないときに何をすればいいのか。
私は、価格を下げることよりも、自分たちの強みや商品の良さを、より多くの人に知っていただく努力が大切だと思っています。
そのためには営業活動が必要です。日々の情報発信もその一つですし、自分自身への投資も必要です。
ただ、これは今日始めたから明日結果が出るものではありません。
毎日少しずつ積み重ねていくしかないと思っています。
また、個人事業主や小さな会社同士で情報を共有することも大切です。地域の事業者同士が切磋琢磨し、それぞれの強みを伸ばしていけば、価格だけではない価値で選んでいただけるようになるのではないでしょうか。
エンラージが契約件数を増やしたい理由
不動産会社の主な売上の一つは仲介手数料です。
仲介手数料の売上を増やそうとすれば、一件あたりの金額が大きな契約を増やす方法と、契約件数そのものを増やす方法があります。
もちろん高額な不動産取引も大切です。
しかし、高額な案件ばかりを追いかければ、これまで当社が大切にしてきた個人事業主様の独立開業のお手伝いから離れてしまうかもしれません。
それは、私がやりたいこととは少し違います。
だからこそ、契約単価だけを上げるのではなく、より多くのお客様のお手伝いができる会社にしていきたいと考えています。
AIに任せられる仕事は任せて、人に会う
そのために、今後ますます活用したいと思っているのがAIです。
事務作業や情報整理など、AIに任せられる仕事はできるだけ任せる。
そして、そこで生まれた時間を使って、私はより多くの人に会いたいと思っています。
現場へ行く。お客様の話を聞く。これから商売を始める方の思いを聞く。
ブログやSNS、ラジオを通して、自分たちが何を考えて仕事をしている会社なのかを伝える。
物件をただ仲介するだけではなく、個人事業主様の独立開業をお手伝いしたい。そして、一つでも多くのお店に、そのお店自身の強みを発揮していただきたい。
そのための時間を増やすためにAIを使う、というのが私の考えです。
適正な利益があるから、仕事を続けられる
利益を残すことと、お客様を大切にすることは、反対ではないと思っています。
適正な利益があるから会社を続けられる。
会社を続けられるからこそ、自分たちが本当にお手伝いしたいお客様へのサービスを続けることができます。
利益率の高い仕事だけを並べればいいわけでもありませんし、安ければお客様のためになるとも限りません。
自分たちの仕事に必要な経費をきちんと把握し、適正な利益をいただきながら、その分、お客様にしっかり価値を返していく。
小さな会社だからこそ、このバランスを大切にしながら、これからも仕事を続けていきたいと思っています。


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