小さな会社を経営していると、「これくらいなら自分でできる」「外注するより、自分でやった方が利益が残る」と考えることがあります。
私自身、以前はそう考えていました。
当社では不動産仲介だけでなく、店舗改装やリフォームのご相談もいただきます。水回りの修理、キッチンの入れ替え、壁紙の張り替え、ペンキ塗り、ハウスクリーニングなど。簡単そうに見える仕事なら、「自分でやれば外注費がかからない。その分、利益になる」と考えて、自分で施工する前提で見積もりを出すこともありました。
確かに、人件費として自分の時間を計算に入れなければ、数字の上では利益率が高く見えます。
ところが実際にやってみると、そんなに単純な話ではありませんでした。
壁紙の張り替えを受けて、次々と仕事が増えていった
あるとき、安易に壁紙の張り替え工事を引き受けました。
壁紙を剥がしてみると下地の状態が悪く、そのまま新しい壁紙を貼ればいいという状態ではありません。
私は職人ではありませんから、下地をどう直せばいいのか分からない。そこでYouTubeを見たり、ネットの記事を探したりして調べました。
やり方が分かったら、今度は必要な道具がありません。ホームセンターへ行って道具を買い、材料を買って現場へ戻ります。
作業を始めると、また別の問題が出てくる。
また調べる。ホームセンターへ行く。材料を買う。
そんなことを繰り返しているうちに、想定していた以上に時間も材料費もかかっていました。
会社に増えていったのは、利益ではなく道具と材料だった
工事が終われば、それで終わりでもありません。
使い切れなかった材料や、その工事のために買った道具が会社に残ります。
きちんと在庫管理できればいいのですが、本業ではないものですから管理も十分にできません。
そして次に似た仕事が入ったとき、「あれ、持っていたかな?」となり、結局また同じようなものを買ってしまう。
外注費を節約しているつもりだったのに、材料費は増える。道具は増える。在庫管理の手間まで増える。
その頃には、「自分は何をやっているんだろう」と思うようになりました。
一番大きかったのは、自分の時間を計算していなかったこと
一番大きな間違いは、自分の時間を「無料」だと思っていたことです。
ネットで施工方法を調べている時間。ホームセンターへ行っている時間。慣れない作業に時間がかかっている時間。失敗して手直ししている時間。
その時間にも、本当はコストがあります。
それ以上に問題だったのは、その間、私は不動産の営業ができていなかったことです。
物件をご案内する。お客様の相談を聞く。開業を考えている方と打ち合わせをする。新しいお客様に会う。
本来、私が使うべきだった時間を、慣れない工事に使っていました。
そして気づいたときには、不動産の売上が落ちていました。
後の祭りです。
もちろん、こうした失敗も経験の一つだと思います。ただ、この経験から強く思ったことがあります。
「僕は不動産屋なんだ」
それ以来、専門工事は基本的に信頼できる業者さんへお願いする、と決めました。
「自分でできる仕事」と「自分がやるべき仕事」は違う
今では、「自分でできるかどうか」だけで仕事を判断しないようにしています。
頑張れば自分でできる仕事は、たくさんあります。
でも、経営者として考えなければならないのは、「それは本当に自分がやるべき仕事なのか」ということだと思います。
職人さんに任せた方がきれいに、早く仕上がる仕事なら、専門家にお願いする。
たとえその仕事だけを見れば当社の利益が薄くなったとしても、お客様にきちんとした仕事を提供でき、私はその時間を本業に使うことができます。
会社全体で考えれば、その方がずっと健全です。
良い下請けさんは、施工だけをしてくれる存在ではない
外注するようになって、もう一つ気づいたことがあります。
良い協力会社さん、良い下請けさんと仕事ができると、本当に仕事がしやすくなります。
施工をきっちりしてくれるのはもちろん、お客様との接客も安心して任せられる。LINEやメールで進捗を報告してくれる。
そうすれば、私からお客様へ「順調に進んでいますね」「もう少しお待ちくださいね」とフォローできます。
そして私は、その間に次の仕事へ行くことができます。
つまり外注費は、単に作業をお願いするためのお金ではありません。
自分が本業に使える時間と、お客様に安心していただける仕事をつくるためのお金でもあると考えるようになりました。
協力会社がいるから「当社でできます」と言える
信頼できる協力会社さんがいることは、当社の仕事の幅も広げてくれます。
お客様から「いいリフォーム屋さんを知りませんか?」と聞かれたとき、以前なら業者さんを紹介するだけだったかもしれません。
今なら「当社でできますよ」とお答えできます。
もちろん、私自身がすべて施工するわけではありません。
信頼できる人たちと一緒に仕事をすることで、エンラージとしてお客様のご相談を受けられるようになります。
そして施工事例が一つ、また一つと増えていけば、それ自体が次の仕事につながっていくと思っています。
実績を見て、「ここならお願いできそう」と思っていただける会社になる。
そうなれば、こちらから毎回売り込まなくても、過去の仕事が次の仕事を連れてきてくれるようになるはずです。
一方で、自分がやるべき仕事もある
何でも人に任せればいい、ということでもありません。
私がこれからも自分でやりたいと思っているのが、物件案内や独立開業に伴う融資申請のサポートなど、お客様と直接向き合う仕事です。
ブログやホームページの記事を読んで、私の考え方に共感して「相談してみよう」と来店してくださる方もいます。
そういうお客様が来てくださったのに、肝心の物件案内や相談をすべて別の人に任せてしまったら、私を選んでくださった意味が薄れてしまいます。
だから、お客様の思いを聞くこと、物件をご案内すること、開業まで一緒に考えることには、自分の時間を使いたいと思っています。
時間をつくることも、小さな会社の経営だと思う
小さな会社では、社長自身がいろいろな仕事をしなければならない場面があります。
だからこそ、「自分でやればお金がかからない」と考えやすいのかもしれません。
でも、自分の時間も会社の大切な経営資源です。
専門家に任せる仕事は、信頼できる専門家へ。
AIに任せられる事務作業や情報整理は、AIへ。
そして、自分に会いに来てくださったお客様との時間は、自分が使う。
今は、そんなふうに仕事を分けていきたいと考えています。
「できる仕事」と「自分がやるべき仕事」は違う。
壁紙を貼りながら遠回りして、ようやく気づいたことです。
これからも失敗することはあると思います。それでも、自分が本当に力を使うべき仕事を見失わず、信頼できる人たちと一緒に、お客様のお役に立てる会社をつくっていきたいと思っています。

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