不動産の売却相談をいただいた際、売主様からよく聞くのが、
「できるだけ高く売りたい」
というご希望です。
もちろん、大切な不動産ですから少しでも高く売りたいと思うのは当然です。
しかし、不動産は高い価格で募集すれば、その分高く売れるというものでもありません。
今回は、不動産会社がどのように査定価格を考えているのか、そして当社が売出価格をどのように考えているのかについてお話ししたいと思います。
不動産の査定価格はどうやって決めるのか
不動産の価格を査定するとき、一つの数字だけを見て価格を決めるわけではありません。
土地であれば、まず参考になるものの一つが「路線価」です。
路線価とは、道路ごとに設定されている1㎡あたりの土地価格で、主に相続税や贈与税を計算する際の土地評価に使用されています。
そのほか、固定資産税評価額、周辺の土地価格、建物がある場合には建築費や現在の建物の状態など、さまざまな要素を確認します。
そして、私が特に重要だと考えているのが実際の成約事例です。
不動産会社では、過去にどのような物件が、どのくらいの価格で成約したのかという取引情報を確認することができます。
「いくらで売りに出ていたか」ではなく、実際に「いくらで売れたのか」。
ここは非常に重要です。
こうした複数の指標を確認しながら、現在の市場であればどのくらいの価格が妥当なのかを判断して査定価格をご提示します。
査定価格に「期待値+α」を考える
ただし、私は査定価格そのままで売り出すことだけが正解だとも思っていません。
不動産には、一つとして同じものがないからです。
例えば、
「子どもをこの学区に通わせたい」
「両親の家の近くに住みたい」
「ずっとこの地域だけで土地を探している」
「この駅から徒歩圏内でどうしても家を建てたい」
という方がいるかもしれません。
一般的な市場では3,000万円程度と査定される不動産でも、その場所をピンポイントで探している方にとっては、もう少し高い価値を感じてもらえる可能性があります。
そこで当社では、客観的な査定価格を基本としながら、物件の特徴や地域の需要などを考えて、**「期待値としての+α」**を持たせた売出価格を検討することも一つの方法だと考えています。
ただし、これは根拠なく高い価格を設定するという意味ではありません。
高すぎる価格は、逆に売却を難しくすることも
相場から大きく離れた価格で売り出してしまうと、購入を検討している方は、
「もう少し価格が下がるまで待とう」
と考えるかもしれません。
これは購入希望者だけではありません。
物件をお客様に紹介する不動産会社も、
「この価格では少し紹介しにくい」
「価格が下がってからお客様に提案しよう」
と様子を見る可能性があります。
その結果、3か月、半年と物件が市場に残り続けます。
そして価格を少しずつ下げ、最終的に当初の査定価格付近まで戻ってきたところで、ようやく問い合わせが増える。
そうなるのであれば、最初から適正な査定価格、あるいはそこに適度な「期待値+α」を加えた価格でスタートした方が、結果として良かったということもあります。
長期間売れずに掲載され続けることで、
「ずっと売れていない物件だな」
「何か理由があるのでは?」
と思われてしまうことも避けたいところです。
1か月経ったら「価格」だけでなく「販売活動」も検証する
不動産の媒介契約は一般的に3か月を一区切りとして考えます。
当社としても、その期間の中で成約につなげたいと考えています。
そのため、売り出して1か月程度経過しても反響が弱い場合には、価格の見直しについて売主様と相談することがあります。
しかし、ここで大切なのは、
「売れないから値段を下げましょう」
だけではいけないということです。
売主様からすれば、
「本当に価格が原因なの?」
「ちゃんと広告してくれているの?」
「まだ購入希望者を見つけきれていないだけでは?」
と思われるのは当然です。
実際、売主様自身が不動産会社のホームページや各ポータルサイトを検索し、「自分の物件が掲載されていない」とご指摘いただくこともあります。
だからこそ、価格を見直す前に、不動産会社側も十分な販売活動を行ったのかを検証する必要があると私は考えています。
当社は「抱える」より「広く流通させる」
そこで当社が大切にしたいのが、物件情報をできるだけ広く流通させることです。
仲介会社にとっては、自社で買主様まで見つけることができれば、売主様・買主様双方から仲介手数料をいただける、いわゆる「両手仲介」になる場合があります。
しかし、売主様にとって一番大切なのは、不動産会社が両手仲介をすることではありません。
大切な不動産が、納得できる条件で、できるだけ早く成約すること。
当社はそこを優先したいと考えています。
そのため、自社だけで購入希望者を探すことにこだわるのではなく、物件によっては他の不動産会社にも広告掲載を可能とし、幅広く情報を発信していく。
多くの不動産会社に物件を知っていただき、その先にいる多くの購入希望者にも物件情報を届けてもらう。
そうして十分な販売活動を行ったうえで市場の反応を確認し、必要であれば売主様と価格について改めて相談する。
「高く売りたい」という売主様の気持ちを大切にしながら、物件を市場に止めず、しっかり流通させる。
当社では、査定価格の根拠をきちんとご説明し、「期待値+α」も含めた売出価格を一緒に考えながら、広く広告・流通を行うことで、多くの方に物件情報をご覧いただき、早期成約につなげていきたいと考えています。
不動産売却は、「いくらで出すか」だけではありません。
どの価格で、どのように市場へ届け、どのタイミングで次の一手を打つのか。
そこまで考えることが、不動産会社の大切な仕事だと思っています。

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