【相続対策シリーズ⑰】実家が空き家になる前に考えること|維持管理・費用・売却・活用

親が高齢になり、介護施設へ入所することになった。それまで当たり前のように人が暮らしていた実家が、ある日から誰も住まない家になる。不動産の仕事をしていると、このようなご相談をいただくことがあります。

実家が空き家になったとき、皆さんならどうされるでしょうか。「誰も住まないのだから売却した方がよい」「思い出のある家だから残しておきたい」「いつか家族の誰かが使うかもしれない」考え方は、ご家族によってさまざまだと思います。

私は、空き家になったからといって、必ずしも売却することが正解だとは考えていません。今回は、実際に当社でお手伝いした2つの事例を交えながら、実家が空き家になる前に考えておきたいことについてお話しします。

実家が空き家になるきっかけは、相続だけではありません

「空き家」と聞くと、親が亡くなり、相続した実家に誰も住まなくなったケースを想像されるかもしれません。しかし、実際には親がご存命でも、施設への入所や子どもとの同居などをきっかけに、空き家になることがあります。

そして、親が施設に入所したからといって、すぐに自宅を売却できるとは限りません。ご本人が売却を希望されているのか。将来、自宅へ戻る可能性はあるのか。ご家族はその家をどうしたいと考えているのか。こうしたことを確認する必要があります。

また、売却には所有者ご本人の意思能力が必要です。判断能力が低下している場合には、成年後見制度などの検討が必要になることもあります。空き家になってから慌てるのではなく、できればご本人が元気なうちに、家族で将来のことを話し合っておくことが大切だと思います。

事例① 施設入所をきっかけに、自宅の売却査定を行ったケース

以前、ご本人が施設へ入所され、それまで住んでいた自宅を使用しなくなったというケースがありました。当社へご相談いただいたのは、ご家族ではなく、ご本人と仕事上のお付き合いがあった会社の代表者の方でした。

その方は、ご本人が営んでいた事業を引き継ぐことになり、自宅についても買い取ることを決められていました。そこで当社が不動産の売却査定を行い、査定結果をご報告しました。その後、ご相談者がその不動産を買い取られました。

このように、今後使用する予定がなく、買い取る方も決まっている場合には、不動産の価値を確認し、売却へ進むという選択肢があります。ただし、施設に入所されているご本人の不動産を売却する場合には、所有者の意思確認や適切な契約手続きが必要です。

事例② ご両親を自宅から見送りたいというご希望

もう一つ、私の印象に残っているご相談があります。ご両親がともに施設へ入所され、誰も住まなくなったご実家について、お子様からご相談をいただきました。その方には、一つの大切な希望がありました。

「両親が亡くなったときには、最後は自宅で葬儀をして見送りたい」

このお話を伺ったとき、私は、そのお気持ちを大切にしたいと思いました。不動産会社としては、空き家になった段階で売却をおすすめすることもできます。しかし、売却してしまえば、ご両親を自宅から見送りたいというご希望をかなえることが難しくなります。

そこで私は、無理に売却を進めるのではなく、ご両親を見送られた後で売却を考えましょうとお話ししました。現在もご両親はお元気に施設で暮らしておられ、ご実家についても売却せず、維持管理を続けていらっしゃいます。

不動産をどうするかという判断には、価格や維持費だけでは測れない、ご家族の想いがあるのだと思います。

空き家を残すなら、適切な維持管理が必要です

ただし、家を残しておくのであれば、何もしなくてよいわけではありません。事例②でも、定期的にご実家へ出入りし、窓を開けて風を通すことや、庭木の剪定などの維持管理が必要であることをお伝えしました。

実際に、長年使用されていた敷地入口の木製門扉が落ちていたため、当社で修繕を行い、鍵の交換にも対応しました。

人が住まなくなった建物は、日常的に異変に気づく機会が少なくなります。雨漏りや建物の傷み、庭木の繁茂などを放置してしまうと、修繕費が大きくなるだけでなく、近隣の方に迷惑をかけてしまう可能性もあります。

空き家を維持するのであれば、定期的な換気や通水、建物の点検、敷地の清掃などを続けることが大切です。そして、誰が管理するのかを決めておくことも必要だと思います。

誰も住んでいなくても、維持費はかかります

空き家になったからといって、建物にかかる費用がなくなるわけではありません。例えば、次のような費用が考えられます。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険料
  • 電気・水道などの基本料金
  • 庭木の剪定や草刈りの費用
  • 建物や設備の修繕費
  • 遠方から管理に通う交通費や、管理を委託する費用

これらは、誰も住んでいなくても発生する可能性がある費用です。また、適切に管理されず、一定の要件を満たして「管理不全空家等」や「特定空家等」として勧告を受けた場合には、住宅用地に対する固定資産税などの特例が適用されなくなることもあります。

「とりあえず、そのままにしておこう」そう考えている間にも、費用や管理の負担は続きます。家を残すという判断をする場合には、こうした費用も把握しておく必要があります。

実家が空き家になったときの4つの選択肢

実家が空き家になった場合、私は大きく分けて4つの選択肢があると考えています。

① 家族の誰かが住む

お子様やお孫様など、ご家族が住む方法です。建物の状態によっては、リフォームが必要になる場合もあります。

② 賃貸住宅として貸す

今後ご家族が住む予定はないものの、建物を所有し続けたい場合には、賃貸住宅として活用する方法もあります。ただし、修繕費や入居者募集、管理の問題に加え、将来ご家族が使いたくなったときに、すぐに明け渡してもらえるとは限らないことにも注意が必要です。

③ 売却する

今後使用する予定がなく、維持管理の負担が大きい場合には、売却する方法があります。建物の状態や立地によって売却価格は異なりますので、まずは査定を受けて、不動産の価値を確認することが大切です。

④ 当面は維持管理を続ける

事例②のように、ご家族の希望があって、すぐに売却しないという選択肢もあります。その場合には、維持費や管理方法を確認し、定期的に建物の状態を見守る必要があります。どの方法がよいかは、不動産の状況だけでなく、ご本人やご家族の希望によって変わると思います。

実家が空き家になる前に、家族で話し合っておきたいこと

実家の将来について考えるとき、私は、まず次のようなことを確認しておくとよいと思います。

  • ご本人は、将来自宅をどうしたいと考えているのか。
  • ご家族の中に、今後その家に住む予定の方はいるのか。
  • 売却する場合、どの程度の価格が見込めるのか。
  • 空き家として残す場合、誰が管理し、費用を負担するのか。
  • 相続が発生した場合、誰が不動産を引き継ぐのか。

もちろん、すべてを事前に決められるとは限りません。それでも、家族の希望や不動産の価値、維持費を知っておくだけで、将来の選択肢を考えやすくなります。

また、相続が発生する前に売却を検討する場合には、ご本人の意思確認が重要です。判断能力が低下してからでは、希望どおりの手続きを進めることが難しくなる場合もあります。だからこそ、元気なうちから少しずつ話し合っておくことが大切なのではないでしょうか。

売却することだけが、不動産会社の仕事ではありません

今回ご紹介した2つの事例は、どちらも施設への入所によって自宅を使用しなくなったケースです。一方は売却という選択をされ、もう一方はご家族の希望を尊重して、現在も家を残されています。同じように空き家になったとしても、答えは一つではありません。

私は、不動産会社だからといって、必ずしも売却をおすすめすることが正しいとは思っていません。もちろん、空き家を放置することにはリスクがありますし、維持管理には費用もかかります。しかし、その家をご家族が大切にしたいと思う理由があるなら、その想いも含めて考えるべきだと思います。

大切なのは、空き家を売るか残すかを急いで決めることではなく、その家をこれからどうしたいのかを考えること。そして、残すのであれば適切に管理し、売却するのであれば納得したうえで進める。実家が空き家になる前に、そんな話し合いができればよいのではないでしょうか。

エンラージ株式会社では、枚方市を中心に、不動産の売却査定や空き家の管理、修繕などのご相談を承っています。ご家族の希望や不動産の状況を伺いながら、無理に売却をすすめるのではなく、それぞれのご事情に合った方法を一緒に考えていきたいと思います。

※実際のご相談事例は、個人が特定されないよう一部の事情を整理して紹介しています。成年後見制度や相続に関する法律・税務上の判断については、必要に応じて各分野の専門家にご相談ください。


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