相続が発生し、兄弟姉妹で実家を引き継ぐことになったとき、皆さんならどのように分けるでしょうか。「兄弟で平等に相続したいから、共有名義にすればよいのでは?」そう考える方もいらっしゃると思います。
確かに、兄弟2人であれば2分の1ずつ、3人であれば3分の1ずつというように、共有持分を設定することで、不動産の権利を分けることはできます。しかし、不動産会社としては、実家を兄弟姉妹で共有名義にすることについて、慎重に考えていただきたいと思っています。今回は、現在当社でご相談を受けている事例を交えながら、共有名義のメリットと問題点、そして共有名義にしない相続方法についてお話ししたいと思います。
将来の相続について、お孫様からご相談を受けています
現在、当社では、お祖母様の将来の相続について、お孫様にあたる方からご相談を受けています。お祖母様はご存命ですが、成年後見人が付いており、ご本人の意思や財産の取り扱いについては慎重な対応が必要な状況です。
将来、お祖母様が亡くなられた場合、お母様とその弟さん2人が相続人になる見込みだと伺っています。ただ、以前からご親族の関係があまり良くなく、過去に別のご家族の相続が発生した際にも、弁護士が関与することになったそうです。そのため、今回も相続が発生したときに問題が起こるのではないかと心配され、ご相談に来られています。
もちろん、実際に相続が発生してみなければ、争いになるかどうかは分かりません。過去に意見が対立したからといって、今回も必ず揉めるとは限らないからです。ただ、こうした事情を事前に把握しているのであれば、将来どのような問題が起こり得るのかを考えておくことは大切だと思います。
私は現在、できる範囲で財産の棚卸しを進めていただき、相続税がどの程度発生する可能性があるのか、また不動産をどのように分ける方法があるのかについて、お話ししています。
兄弟姉妹で共有名義にするメリットはあるのか?
まず、共有名義にすること自体が、必ずしも悪いわけではありません。例えば、兄弟2人で実家を相続し、どちらも不動産を手放したくないと考えている場合です。共有名義にすれば、一方だけが不動産を取得することによる不公平感を抑えられるかもしれません。
また、一人が不動産を取得する代わりに、もう一人へまとまった現金を支払う必要がある場合、共有名義にすることで当面の資金負担を避けられることもあります。そして、兄弟姉妹全員が実家を残したいと考えているのであれば、共有したまま所有し続けるという選択肢もあります。ただし、これらは主に相続する時点でのメリットです。私が心配しているのは、その後のことです。
共有名義にすると、売却するときに全員の同意が必要
例えば、兄弟2人で実家を2分の1ずつ共有名義にしたとします。数年後、兄は「誰も住んでいないし、維持費もかかるので売却したい」と考えました。しかし、弟は「思い出のある実家だから売りたくない」と反対しています。
この場合、原則として、共有者全員の同意がなければ不動産全体を売却することはできません。たとえ兄が2分の1の持分を所有していても、自分の判断だけで実家全体を売却することはできないのです。もちろん、自分の共有持分だけを売却することは原則として可能です。しかし、共有持分だけを購入したいという方は限られますし、通常の不動産売却とは異なる難しさがあります。
また、売却だけではありません。固定資産税や建物の修繕費、草刈りなどの維持管理についても、誰がどのように負担するのか、話し合いが必要になります。共有者同士の関係が良好であれば、問題なく進められるかもしれません。しかし、もともと関係が良くない場合には、こうした話し合い自体が負担になる可能性があります。
共有者の一人が亡くなると、さらに複雑になることも
もう一つ、知っておいていただきたいことがあります。それは、共有名義にした不動産が、次の相続によってさらに複雑になる可能性があるということです。
例えば、兄弟2人で実家を共有していたとします。その後、兄が亡くなり、兄の持分を配偶者や子どもたちが相続することになった場合、実家の共有者が増える可能性があります。すると、最初は兄弟2人だけで話し合えばよかったことが、次の世代では複数の親族との話し合いになるかもしれません。
時間が経つにつれて、共有者同士の関係が薄くなることも考えられます。共有名義は、相続したときには公平に見えても、将来にわたって管理や売却がしやすい状態とは限らないのです。
共有名義にしない方法① 売却して現金で分ける「換価分割」
では、兄弟姉妹で実家を共有名義にしたくない場合、どのような方法があるのでしょうか。一つは、不動産を売却して現金に換え、その売却代金を相続人で分ける方法です。これを「換価分割」といいます。
例えば、誰も住む予定のない実家を売却し、仲介手数料などの費用を差し引いた金額を、相続人の合意した割合で分配します。不動産そのものを共有し続ける必要がなくなるため、将来の売却や管理について意見が対立する問題を避けやすくなります。
ただし、売却価格について相続人全員が納得できるとは限りません。「もっと高く売れるはずだ」「今は売りたくない」といった意見が出る可能性もあります。そのため、売却する場合にも、事前に不動産の査定を行い、価格の目安や売却に必要な期間について共有しておくことが大切です。
共有名義にしない方法② 一人が相続する「代償分割」
もう一つは、相続人の一人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。これを「代償分割」といいます。
例えば、兄弟2人で相続する実家の価値が2,000万円で、他の相続財産がないと仮定します。兄が実家を単独で取得し、弟に1,000万円を支払うことで、経済的に平等な分割を目指すことができます。もちろん、実際には他の預貯金なども含めて分割内容を考えることになります。また、相続人が3人であれば、それぞれの取得割合に応じて調整する必要があります。
この方法のメリットは、不動産を一人の名義にできることです。将来の管理や売却について、共有者全員の同意を得る必要がなくなります。一方で、不動産を取得する人が代償金を用意できなければ、この方法は難しくなります。また、不動産の評価額をいくらと考えるのかについて、相続人の意見が分かれる可能性もあります。
成年後見人が付いている場合、生前にできることは限られる
今回ご相談を受けているケースでは、お祖母様に成年後見人が付いています。そのため、将来の相続人の希望だけで、ご本人の財産を自由に動かすことはできません。成年後見人は、あくまでご本人の利益を守るために財産を管理する立場です。相続人の都合で生前に財産を分配したり、相続対策だけを目的として処分したりできるわけではありません。
また、成年後見人が付いているからといって、ご本人の意思が法律上すべて無視されるわけでもありません。ご本人の意思や判断能力、具体的な手続きについては、成年後見人や専門家による慎重な確認が必要です。
現時点では、実際に相続が発生した後の分割方法を決定できる状況ではありません。それでも、将来の相続に備えて、確認できる範囲で財産を整理し、相続税の見込みや不動産の分け方を考えておくことには意味があると思います。ただし、財産情報の確認や具体的な手続きは、成年後見人の権限やご本人の利益に配慮して進める必要があります。
公平に相続することと、共有名義にすることは違う
今回の記事で、私が一番お伝えしたいことがあります。それは、「兄弟姉妹で公平に相続すること」と「不動産を共有名義にすること」は、必ずしも同じではないということです。
共有名義にすれば、持分という形では平等に分けられるかもしれません。しかし、その後の管理や売却で意見が合わなければ、かえって問題を長引かせる可能性があります。特に、以前から親族間の関係が良好ではない場合には、安易に共有名義にすることは避けた方がよいと私は考えています。
不動産を売却して現金で分ける方法もあれば、一人が取得して他の相続人に代償金を支払う方法もあります。どの方法が適しているかは、不動産の価値、預貯金などの財産、相続人の希望や資金状況によって異なります。そして、相続が発生する前にすべてを決められるとは限りません。
だからこそ、まずは財産の全体像を把握し、どのような選択肢があるのかを知っておくことが大切ではないでしょうか。相続は、財産を分ける手続きであると同時に、ご家族の関係にも影響する問題です。せっかく残された大切な財産が、将来の争いの原因にならないように。不動産会社として、相続後の管理や売却まで見据えたご提案をしていきたいと思います。
エンラージ株式会社では、枚方市を中心に、不動産の相続・売却・査定・管理に関するご相談を承っています。相続人同士の紛争や遺産分割に関する法律上の問題については弁護士、相続税については税理士、相続登記については司法書士など、専門家への相談が必要です。不動産をどう分けたらよいのか、共有名義にすべきか迷われている方も、お気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際のご相談事例は、個人が特定されないよう一部の事情を整理して紹介しています。

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