【相続対策シリーズ⑬】元気なうちに自宅をどうするか考える|住み替え・売却・賃貸・リフォーム

相続対策というと、相続税や生前贈与、遺言書などを思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、不動産の仕事をしている私が、ぜひ元気なうちに考えていただきたいと思うのが、「これから自宅をどうするか」ということです。

売却するのか、賃貸に出すのか、住み替えるのか。それともリフォームをして、住み慣れた家で暮らし続けるのか。

先に私の考えをお伝えすると、今すぐ売却することが正解だとは思っていません。ご本人が住み慣れた家で暮らしたいのであれば、まずはその意思を尊重するべきだと考えています。

施設への入居をきっかけに、自宅を売却するケース

これまでに、施設への入居によって自宅に住まなくなり、売却のご相談をいただいたケースを数件担当しました。

お子様たちはそれぞれ持ち家があり、実家に戻って住む予定もない。そうなると、空き家となった自宅を今後どうするかが課題になります。

建物がきれいな状態であれば、売却だけでなく賃貸という方法も考えられます。ただ、賃貸経営の経験がないご家族にとって、突然「家主になる」というのは簡単な話ではありません。

入居者募集や家賃の管理、設備の故障への対応、退去後の修繕、空室期間の負担など、これまで経験したことのない仕事やリスクが生じます。

実際には、将来相続するお子様たちも、「売却できるうちに現金化しておきたい」と考え、売却を選ばれることが多いと感じています。

売却・賃貸・住み替え・リフォーム。それぞれに選択肢がある

自宅の今後について考える際、主な選択肢を整理してみます。

選択肢 メリット 考えておきたいこと
売却 不動産を現金化でき、維持管理の負担を減らせる 住む場所の確保、売却費用や税金、売却時期
賃貸 所有したまま家賃収入を得られる可能性がある 空室、修繕、入居者対応、将来の売却のしやすさ
住み替え 階段や庭の管理など、暮らしの負担を軽くできる場合がある 住環境の変化、費用、本人の希望
リフォーム 住み慣れた家で、暮らしやすさを改善できる 工事費用、建物の状態、今後の生活への適合

どれか一つがすべての方にとって正解というわけではありません。家族構成や資金の状況、建物の状態、そして何よりご本人の希望によって答えは変わります。

住み慣れた家で暮らしたい。その気持ちを大切にしたい

「階段があるからマンションへ」「将来が心配だから施設へ」と、周囲が良かれと思って住み替えを勧めることもあるでしょう。

もちろん、ご本人がマンションへの住み替えや施設への入居を希望されるのであれば、それも良い選択だと思います。

ただ、住み慣れた家には、長年の思い出や近所とのつながり、慣れ親しんだ生活のリズムがあります。望まない環境の変化が、心身の負担になる場合もあります。

だからこそ、ご本人が「ここに住み続けたい」と考えているのであれば、その意思を尊重することが第一だと思っています。

相続のために我慢せず、快適な暮らしのためにリフォームする

以前、ご親族から自宅のリフォームについてご相談をいただき、実際に工事をさせていただいたことがあります。

昔ながらの間取りで、お風呂やトイレ、キッチンが使いづらくなっていたため、設備を新しくするだけではなく、日々の生活動線も考えて、快適に使えるようにしました。

相続のことを考えると、「少しでも多くのお金を子どもたちに残したい」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、私は資金を次の世代に残すことも大切ですが、まずはご自身の快適な生活があってこそだと思います。

住み慣れた家でこれからも暮らしたいのであれば、必要なところにお金を使って住環境を整えることも、十分に価値のある選択です。将来の体の変化を見据え、段差や手すりなどの安全面も一緒に考えられるとよいですね。

「家を残す」だけが、子どものためではない

実は、私自身の両親も、将来の自宅について考えてくれています。

私も兄もすでに持ち家があるため、両親は「家を解体する費用は残してある」と話してくれました。

つまり、将来、誰も住まなくなったときには、建物を解体して土地を売却できるように準備してくれているということです。

もちろん、解体が必要かどうかは建物の状態や売却方法によって異なります。更地にする前に、解体費用や税金、買主の需要などを確認する必要もあります。

それでも、両親が自分たちの考えを伝えてくれていることは、私たち兄弟にとってありがたいことです。

家を引き継いで住みたいご家庭もあれば、思い出のある実家を残したいご家庭もあるでしょう。一方、子どもたちがそれぞれ住まいを持ち、実家を使う予定がないご家庭もあります。

家族のあり方はそれぞれで、答えは一つではありません。大切なのは、親と子の考えをお互いに知っておくことではないでしょうか。

元気なうちに考えたいのは、判断できなくなったときのこと

ご本人が自宅に住み続けたいのであれば、無理に売却する必要はないと思います。

ただし、将来、認知症などによって不動産の売却や賃貸に必要な判断が難しくなる場合があります。そのときにご家族が売却を希望しても、家族というだけで自由に手続きできるわけではありません。

だからこそ、ご本人が元気で、ご自身の意思を伝えられるうちに、将来の財産の方向性を話し合っておくことが大切だと考えています。

例えば、遺言書は主に亡くなった後の財産の承継先などを定めるための制度です。一方、民事信託(家族信託)は、適切に設計することで、生前の判断能力低下に備えた財産管理や不動産の処分について定められる場合があります。

また、任意後見契約なども選択肢になります。それぞれ役割や制約が異なるため、必要に応じて司法書士、弁護士、税理士などの専門家と相談しながら検討することが大切です。

何より、制度を利用するかどうかの前に、「自宅に住み続けたい」「施設に入ったら売却してよい」「子どもたちに管理の負担をかけたくない」といった本人の希望を家族で共有することから始められると思います。

最後に|自宅の将来を考えることは、今すぐ手放すことではない

自宅は、単なる不動産ではありません。長い時間を過ごし、家族の思い出が詰まった場所です。

だからこそ、相続対策という理由だけで、売却や住み替えを急ぐ必要はないと私は考えています。

住み慣れた家で暮らしたいのであれば、その意思を尊重する。必要ならリフォームをして、快適に暮らせるようにする。

一方で、将来施設に入居したり、誰も住まなくなったりしたときに備えて、売却・賃貸などの選択肢を知り、家族で方向性を話し合っておく。

「元気なうちに自宅をどうするか考える」とは、「元気なうちに自宅を売る」という意味ではありません。

ご自身が安心して暮らすために。そして、将来、家族が困らないために。

その両方を大切にすることが、私の考える相続対策です。


エンラージ株式会社では、大阪府枚方市を中心に、寝屋川市・交野市・八幡市・京田辺市などで、不動産売却や賃貸活用、店舗・住宅のリフォーム、相続に関するご相談を承っています。

「今すぐ売るべきか分からない」という段階でも、まずはご本人とご家族の希望を伺いながら、一緒に選択肢を整理していきます。

公式サイト:https://en-large.co.jp/

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。不動産の売却・賃貸に関する税務や、遺言・民事信託・任意後見などの具体的な制度設計は、個別事情に応じて専門家にご確認ください。


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