【相続対策シリーズ⑨】賃貸マンションを所有するメリットと注意点|家賃収入・維持管理費・相続税評価

相続対策を考える際、賃貸マンションやアパートなどの収益不動産を所有するという選択肢があります。毎月の家賃収入が得られることに加え、一定の条件を満たせば、相続税の計算上、不動産の評価額が低くなる場合もあります。

しかし、私は不動産の仕事をするなかで、賃貸マンションは相続税のことだけを考えて購入するものではないと思っています。建物の維持管理費や空室リスク、将来誰が引き継ぐのかという問題もあります。今回は、実務で感じていることを交えながらお話しします。

1.賃貸マンションを所有するメリット

賃貸マンションを所有する大きなメリットは、毎月の家賃収入を得られることです。入居者が安定していれば継続的な収入が期待でき、将来仕事を引退した後の生活を支える収入源になるかもしれません。また、不動産という資産を保有でき、相続税評価額が現金とは異なる方法で計算されることも特徴です。

ただし、家賃収入がそのまま利益になるわけではありません。

2.表面利回りだけでは見えない維持管理費用

例えば、6,000万円のマンションで年間480万円の家賃収入が見込める場合、表面利回りは8%です。

480万円 ÷ 6,000万円 × 100 = 8%

数字だけを見ると魅力的ですが、実際にはさまざまな費用が発生します。

屋上や外壁の修繕

陸屋根の防水劣化、サイディングの腐食、外壁塗装の劣化、地震などによるクラックが雨漏りの原因となることがあります。雨漏りが起これば、原因箇所の補修だけでなく、室内の天井や壁の修繕まで必要になる場合があります。

エアコンや給湯器などの設備交換

入居者が退去するたびに原状回復工事が必要になることがあります。エアコンや給湯器にも寿命があり、使用状況によって異なりますが10〜15年程度で交換が必要になることもあります。同時期に設置された複数の設備が、近い時期に交換を迎える可能性もあります。

水道の子メーターにも交換費用がかかる

所有者が管理する私設の子メーターを設置している場合、所有者側で維持管理や交換を行う必要があります。水道メーターには計量法に基づく検定有効期間があり、一般的には8年です。入居者への料金請求に使用する場合、適切な時期に交換する必要があります。

日常的な管理費用も必要

共用部分の定期清掃、植栽の剪定、消防設備の点検や不具合による修理・交換、貯水槽の清掃、固定資産税、火災保険料、管理委託費なども考慮する必要があります。必要な点検は建物の規模や設備によって異なります。

こうした費用は毎月一定ではありません。翌年に屋上防水や設備交換が重なり、まとまった支出が発生することもあります。購入前には過去の修繕履歴や実際の維持管理費用を確認することが大切です。

3.家賃収入から実際にいくら残るのか

購入価格6,000万円、年間家賃収入480万円の物件で、管理費・修繕費・税金・保険料などの年間運営費用が120万円なら、差引額は360万円です。

480万円 − 120万円 = 360万円

購入価格に対する割合は6%。ただし、融資の返済や所得税などは別に考える必要があり、360万円がすべて手元に残るわけではありません。空室による収入減が10%なら、年間家賃収入は432万円になります。満室時だけでなく、空室や修繕が発生した場合の収支も計算しておきたいところです。

4.駅からの距離と地域の賃貸需要

駅から遠い物件は、駅に近い物件と比較すると競争力が劣る場合があります。もちろん、家賃や間取り、周辺環境によって選ばれる物件もあります。大切なのは、周辺の募集状況、家賃相場、空室期間などを確認し、その地域にどのような賃貸需要があるか調査することです。

枚方エリアでは駐車場の確保も重要

枚方エリアの不動産を扱うなかで、以前は月極駐車場だった土地が分譲住宅地やアパートに変わり、周辺で駐車場を確保しにくくなったと感じる地域があります。一方、分譲マンションでは機械式駐車場の維持費増加や利用者の減少が課題になることもあります。

駐車場の需要は地域ごとに異なります。10戸のマンションで敷地内駐車場が3台分なら、車を必要とする入居希望者が近隣で月極駐車場を確保できるかどうかも募集に影響する可能性があります。近隣の駐車場が将来も継続するとは限りません。建物だけでなく、周辺環境の変化まで確認することが大切です。

5.賃貸マンションは相続税評価額が低くなる?

現金は原則としてその金額で評価されますが、不動産は土地と建物を別々に評価します。土地は原則として路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額を基に計算します。さらに、第三者へ貸していることによる権利関係を考慮し、評価額が減額される場合があります。

土地は「貸家建付地」として評価される場合がある

所有地に賃貸マンションを建てて第三者へ貸している場合、一定の要件のもとで貸家建付地として評価されます。自用地評価額3,000万円、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%と仮定すると、

3,000万円 ×(1 − 60% × 30% × 100%)= 2,460万円

この例では540万円の評価減です。

建物も貸家として評価される

建物の固定資産税評価額1,500万円、借家権割合30%、賃貸割合100%なら、

1,500万円 ×(1 − 30% × 100%)= 1,050万円

実際の評価は地域や賃貸状況で異なり、空室を常に満室と同じ扱いにはできません。また、貸付事業用宅地等として一定の要件を満たす場合には、200㎡までの部分について50%の評価減が認められることがあります。事業継続・保有・取得時期などの要件があるため、適用可否は税理士などの専門家に確認してください。

6.長く所有するつもりでも、売却時の価格を確認しておく

私は、賃貸マンションは基本的に長く所有し、安定した家賃収入を得ることが望ましいと考えています。ただし、急にまとまった資金が必要になることもあります。購入時点で周辺の収益物件が実際にいくらで売買されているか、成約事例を確認しておくことが大切です。

売出価格と成約価格は必ずしも同じではありません。表面利回りが良くても、売却時に買い手が見つかりにくければ資金化に時間がかかる可能性があります。購入時に築20年だった建物も、15年所有すれば築35年です。現在の成約事例が将来の価格を保証するわけではありませんが、購入判断の重要な材料になります。

7.次の世代へ、賃貸事業そのものを引き継ぐ

賃貸マンションの相続は、不動産を受け取るだけではありません。入居者への対応、修繕、家賃管理、空室募集など、賃貸事業そのものを引き継ぐことになります。

お子さんたちに引き継ぐ意思があるなら、親御さんが元気なうちから一緒に経営に関わり、費用の見方や空室・修繕への対応、管理会社との関わり方を経験してもらうのも一つの方法です。一方、次世代に継ぐ意思がなければ、売却や資産の組み替えを早めに考えることも大切です。

相続するのは建物だけではなく、賃貸事業そのもの。この視点を忘れないようにしたいと思っています。

8.節税だけを目的にしない賃貸マンション経営

相続税評価額が下がるからといって、必ずしも良い投資になるわけではありません。維持管理費、空室リスク、賃貸需要、売却可能性、次世代への承継を総合的に考え、長く安定して所有できる物件を選ぶことが大切です。

相続税対策のために賃貸マンションを所有するのではなく、賃貸事業として成り立つ不動産を所有し、その結果として相続対策にもつながる。私はこの順番を大切にしたいと考えています。

エンラージ株式会社では、枚方市・寝屋川市・交野市・八幡市周辺を中心に、不動産売買や賃貸に関するご相談を承っています。賃貸マンションの購入・売却や、相続した収益不動産の今後についてもお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な情報を紹介するものであり、特定の不動産投資や節税効果を保証するものではありません。税務上の判断は税理士などの専門家へご確認ください。


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