店舗やテナントを探していると、募集条件に「定期借家契約3年」「定期借家契約5年」などと書かれている物件があります。
独立開業を考えているお客様からすると、「普通の賃貸借契約と何が違うのだろう」と感じることもあると思います。
特に店舗の場合、物件を借りるだけではありません。内装工事をして、設備や什器を揃え、業種によっては数百万円、場合によっては1,000万円近い初期投資が必要になることもあります。
そのため私たちは、定期借家契約の店舗をご紹介する際、単に「契約期間が何年なのか」だけではなく、その期間が終わった後を貸主様がどのように考えているのかも重要だと考えています。
定期借家契約は期間満了でいったん終了します
まず、定期借家契約について簡単に整理します。
一般的な普通借家契約には更新がありますが、定期借家契約は、あらかじめ定めた期間の満了によって契約が終了する契約です。
ただ、実際の店舗仲介の現場では、同じ定期借家契約でも貸主様によって考え方が異なります。
期間満了後、双方に問題がなければ新たに再契約することを想定している物件もあれば、建替えなどの予定があり、決められた期間で本当に終了する物件もあります。
この記事では分かりやすくするため、前者を「再契約を想定したケース」、後者を「期間満了で終了するケース」としてお話しします。
当社の家主様では「3年」で再契約を想定したケースがあります
当社がお付き合いしている家主様の物件で、3年間の定期借家契約を採用しているケースがあります。
この物件では、3年経ったら必ず退去してもらうという考えではありません。借主様が契約内容を守り、家主様との良好な関係が続いていれば、期間満了後に双方合意のうえで再契約するという考え方です。
実際に再契約して、引き続き物件を使用していただくケースもあります。
一方で、再契約に至らなかったこともあります。
飲食店で、夜間の騒音や物件の使い方について問題があり、再三の注意にもかかわらず改善が見られなかったケースです。その際には、定期借家契約の期間満了を一つの区切りとして、契約は終了しました。
こうした経験から感じるのは、再契約を想定した定期借家契約には、貸主様にとって、問題なく物件を使っていただける借主様とは関係を続ける。一方で、問題が繰り返される場合には期間満了を一つの区切りにする。という意味もあるということです。
「再契約を想定しています」と言われても不安になるのは当然です
ただし、これは貸主様側から見た考え方です。
借主様から見れば、「問題がなければ再契約する予定です」と説明されたとしても、契約書に書かれている期間が2年や3年なら、不安に思われるのは当然だと思います。
例えば、店舗を作るために500万円の内装工事をするとします。もし本当に2年で契約が終わるのであれば、単純に24か月で考えても、500万円の投資だけで月約20万8,000円です。
これに家賃、人件費、仕入れ、光熱費などがかかります。さらに退去する際には、原状回復費用が必要になる可能性もあります。
もちろん、実際の経営判断や会計上の減価償却はこんな単純な計算ではありません。それでも、「この契約期間で、開業にかけたお金を回収できるのか」という視点は、店舗を借りるうえで非常に大切だと思います。
再契約の「実績」が分かれば判断材料になります
私たちが定期借家契約の物件をご紹介する際に確認したいことの一つが、これまでの再契約実績です。
例えば管理会社や家主様から、「これまで問題なく営業されているテナントとは再契約しています」という話を聞くことができれば、それもお客様へお伝えするための一つの判断材料になります。
もちろん、過去に再契約した実績があるからといって、今回も必ず再契約できるという保証にはなりません。将来、貸主様側の事情が変わることもあります。
だからこそ私たちは、分かっていることと、分からないことを分けてお伝えすることが大切だと思っています。
反対に、管理会社や家主様へ確認しても、再契約についての考え方が分からない場合があります。「2年後のことは、その時にならないと分かりません」という状況であれば、数百万円の初期投資を予定しているお客様に、私たちも簡単に「大丈夫ですよ」とは言えません。
10年契約でも、本当に10年で終了した物件があります
反対に、当社が扱った物件では、10年間の定期借家契約だったケースもあります。
こちらは最初から、将来的に建物を建て替える予定がありました。
10年と聞くと、2年や3年よりずっと安心できるように感じるかもしれません。しかし、この物件は再契約を想定したものではありません。
実際に10年で契約は終了。その後、建物は取り壊されて更地になり、新しい建物へ建て替えられました。
この実例を見ると、3年だから必ず短い。10年だから安心。という単純な話ではないことが分かります。
3年契約でも、良好な関係が続き、双方が合意すれば再契約して長く営業されるケースがあります。一方で10年契約でも、最初から10年後に終了することが決まっている場合があります。
だからこそ、契約期間の数字だけではなく、「なぜ、この物件は定期借家契約になっているのか」まで確認することが大切だと思います。
契約期間そのものを相談できる場合もあります
そして、もう一つ確認してみたいのが、契約期間そのものです。
募集条件に「定期借家2年」と書かれていたとしても、すべての物件で必ず2年から変更できないとは限りません。
例えば、「この業種では内装工事にこれくらいの費用がかかります。2年では投資回収が難しいので、5年間の契約にできませんか」と貸主様へ相談することも考えられます。
これは再契約を想定している物件でも、期間満了で終了する予定の物件でも同じです。
もちろん、建替え時期がすでに決まっているなど、貸主様にも定期借家契約にしている理由があります。その場合は難しいでしょう。
しかし、募集条件に書かれた年数だけを見て諦めるのではなく、なぜその期間なのかを確認し、事情によっては期間を延ばせないか相談・交渉してみる。これも事業用物件を仲介する私たちの仕事だと思っています。
短期間で終了する店舗ほど、借り手側のハードルは高くなります
これは家主様にも知っていただきたいところです。
例えば、建替えまでの2年間だけ店舗を貸したい。貸主様側には当然、そのような事情もあります。
ただ借主様からすると、「2年しか営業できない場所に、何百万円の内装工事をかけられるだろうか」という判断になります。
契約期間が短くなれば、初期投資を抑えて営業できる業種や、短期間で投資を回収できる事業など、借りられる方も限られてきます。
期間満了で終了することが決まっているのであれば、その期間を前提として、賃料や物件の状態、どのような業種に向いているのかまで考えて募集することも大切だと思います。
大切なのは「何年か」だけではなく「なぜ定期借家なのか」
定期借家契約だから悪い物件ということではありません。普通借家契約だから必ず安心ということでもありません。
私たちが店舗の定期借家契約を見る時に確認したいのは、「何年間の契約なのか」だけではなく、「なぜ定期借家契約なのか」です。
再契約を想定しているのであれば、これまでの再契約実績や貸主様の考え方を確認する。2年、3年では初期投資の回収が難しいのであれば、契約期間を延ばせないか相談してみる。期間満了で終了することが決まっているのであれば、その期間内で投資を回収できる事業なのかを考える。
そして、将来について確約できないことは、確約できないものとしてお客様へきちんとお伝えする。
店舗の場合、物件を借りることがゴールではありません。内装工事をして、お店をOPENして、そこから商売を続けていくことが始まりです。
だからこそエンラージでは、募集図面に書かれた「定期借家○年」だけを見るのではなく、その契約期間とお客様の事業計画・初期投資が合っているのかまで一緒に考えながら、物件をご紹介していきたいと思っています。

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