「最初に見た物件が一番良かった。」一件しか見ずに決めてもよいかどうか。

独立開業のために物件を探し始めて、最初に見た物件がとても良かった。

「ここでやりたい。」

そう思ったものの、少し時間が経つと、「でも、まだ一件しか見ていない……」「もっといろいろな物件を見てから決めた方がいいんじゃないか?」そんな不安が出てくることがあります。

実は最近、当社で物件探しをお手伝いしているお客様にも、似たようなケースが続きました。

今回はその2つの事例から、「最初に見た物件を決めてもいいのか?」について考えてみたいと思います。

業界未経験から飲食店の開業を目指すお客様

一人目は、飲食店の開業を考えて当社へ相談に来られたお客様です。

これから始めようとしている業界については未経験。そのため私たちは、物件を探すだけではなく、まず創業計画書を一緒に作りながら、実際にどのくらいの売上が必要なのか、どのくらい経費がかかり、最終的にいくら残るのか。そうしたことを一つずつ確認していきましょう、とお話ししました。

ただ、お客様はすでに前職を退職されており、現在はお仕事をされていません。時間をかけて勉強することも大切ですが、生活のことを考えると、条件に合う物件があれば、できるだけ早く開業へ向けて動くことも必要です。

そこで、お聞きしていた業態や条件から、私たちが「この物件なら合うのではないか」と考えた物件をご紹介しました。結果、お客様にも大変気に入っていただきました。

一人で営業するなら、まず固定費を考える

このお客様は、お一人でお店を営業される予定です。そこで私がお話ししたのが、できるだけ固定費を抑えることでした。

商売を始めれば、売上が多い月もあれば少ない月もあります。その中でも家賃は毎月支払わなければなりません。

今回の物件は、私たちが考えていた事業モデルの家賃水準に収まっていました。さらに、もともと飲食店として使われていた物件です。一から店舗を作る場合と比べると、開業時の工事費などを抑えられる可能性もあります。

そういった理由から、私たちとしてもおすすめできる物件でした。

ところが、お客様には一つ迷いがありました。「本当にここでやって成功するのだろうか。」

物件そのものは気に入っている。条件も悪くない。それでも、初めての独立です。不安になるのは当然だと思います。

「ほかの物件も見たい」という気持ちも大切にしたい

私たちから「この物件がいいので、すぐに決めましょう」と急かすことはしませんでした。

お客様からほかの物件も見てみたいという希望がありましたので、別の候補も探してご紹介し、実際に見学していただくことにしました。

もちろん、私たちとしては最初の物件が事業計画に合っていると考えています。そして、良い物件はいつまでも待ってくれるわけではありません。ほかの物件を見ている間に、最初の物件へ別のお客様から申し込みが入る可能性もあります。

だから、比較するのであれば私たちもできるだけ早く動く。二件目、三件目の候補を探し、できるだけ早くご案内して、比較したうえで判断していただきたいと考えています。

もう一組は、数年前から独立を考えていたお客様

もう一組、現在お手伝いしているお客様がいらっしゃいます。こちらのお客様は、先ほどのお客様とは少し状況が違います。

業界経験は十分にお持ちで、数年前から独立開業を考え、物件情報もいろいろと見ておられました。

そんな中、当社のホームページに掲載していた物件を見つけてお問い合わせをいただきました。しかも、その物件はお客様がこれから始めたいと考えている業態と同じ業態の居抜き物件でした。

通常なら1,000万円を超える可能性がある初期投資

この業態で一からお店を作ろうとすると、内装工事や設備への投資を合わせて、1,000万円を超える可能性があります。

ところが今回は同業態の居抜き物件です。既存の内装や設備を利用できれば、開業時の初期投資を大きく抑えられる可能性があります。

もちろん、良いことばかりではありません。既存設備ですから、開業後に故障する可能性もあります。その点はリスクとして考えておかなければなりません。

それでも、希望する業態の居抜き物件がちょうど希望するエリアに出てくる機会は、そう多くありません。そのため当社としては、「この物件は申し込む価値があると思います」とお伝えしました。

物件ではなく「地域」が不安だった

ところが、このお客様にも不安がありました。同じエリアにはお住まいなのですが、今回の物件は駅を挟んだ反対側。そのため、「この辺りの地域性がよく分からない」ということを心配されていました。

私たちは普段からこの地域で物件をご案内していますし、実際にお客様との契約もあります。さらに、以前この物件で営業されていたお店で、私自身が商品を購入したこともありました。

分かる範囲ではありますが、そうした実際の経験も含めて地域についてお話ししました。物件資料に書かれている家賃や面積だけでは分からないこともあります。地域で仕事をしている不動産会社だからこそ伝えられることもあると思っています。

良い物件だからこそ、一度数字を確認してみる

こちらのお客様は、ご夫婦で独立開業される予定です。物件としては魅力があります。

それでも、「居抜きだから安く始められる」という理由だけで申し込みをおすすめするのは少し違うと思いました。

そこで現在、「一度当社へ来ていただいて、一緒に創業計画書を作りませんか」とご提案しています。

毎月どれくらい売り上げればいいのか。仕入れや家賃などの経費はいくらかかるのか。そこからどのくらい利益が残るのか。そして、ご夫婦の生活を含めて事業として続けていけそうなのか。

そこを一緒に確認して、納得できれば申し込みましょう。現在、そんなお話を進めているところです。

一件目で決めることは、本当に早すぎるのでしょうか

私は、物件探しで大切なのは「何件見たか」ではないと思っています。

10件見たから正しい判断ができるとは限りません。反対に、一件しか見ていないから判断が早すぎるとも限りません。

家賃は事業計画に合っているか。初期投資は無理のない範囲か。その場所で予定している営業ができるのか。必要な設備は整っているか。そして、売上や利益を考えたときに、その物件で事業を続けていけそうなのか。

そうした条件を一つずつ確認した結果、「ここでやりたい」と思えるのであれば、私は一件目で決めてもいいと思っています。

ただ、お客様の表情に迷いを感じたら

一方で、お客様と一緒に物件を見ていると、言葉だけでは分からないことがあります。

「いい物件ですね」と言いながらも、どこか不安そうだったり、迷っているように見えたりすることがあります。

そんな時は、「ほかの物件も見てみましょうか」とお話しします。

一度比較することで、「やっぱり最初の物件が良かった」と思えることもあります。それなら、それも大切な判断材料です。

ただし、その間に最初の物件がなくなってしまう可能性もあります。

だからこそ、比較したいということであれば、私たちもできるだけ早く二件目、三件目を探し、ご紹介、ご案内する。

急かさない。でも、決断のタイミングを逃さない。

その間に立つことも、独立開業の物件探しをお手伝いする不動産会社の役割だと思っています。

物件を決める前に、一度「商売」として考えてみる

独立開業の物件探しは、住まい探しとは少し違います。

「好きだから」「きれいだから」「なんとなく雰囲気がいいから」だけでは決められません。

その場所で商売をして、毎月家賃を払い、経費を払い、自分たちの生活をしていかなければなりません。

だから私たちは、物件をご紹介するだけではなく、必要であれば創業計画書を一緒に作りながら、売上や利益についても一緒に考えています。

最初に見た物件が、とても気に入った。

そんな時は、「一件しか見ていないからダメ」ではなく、「この物件で自分の商売が成り立つだろうか」という視点で、一度考えてみてはいかがでしょうか。

そのうえで迷いが残るなら、ほかの物件も見てみる。そして「やっぱり最初の物件がいい」と思えたなら、それも一つの答えだと思います。


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