テナント物件をご紹介していると、ときどきこんな話になります。
「長いこと空いているんだったら、家賃を下げたらいいのに」
借りる側からすると、確かにそう思いますよね。
半年、1年と空いているのであれば、少し家賃を下げてでも入居してもらった方が、家主様にとっても良いのではないか。
私自身も、募集賃料が明らかに周辺相場から逸脱していると感じれば、家主様に賃料の是正をご提案します。
ただ、長く空いているからといって、「家賃を下げればいい」と単純には考えていません。
今回は、日頃テナント仲介をしていて感じる「家賃交渉」について書いてみたいと思います。
空いていても、希望家賃で貸したい家主様もいます
実際に家主様とお話ししていると、「この家賃で決まらないのであれば、空いていても構わない」という考えの方もいらっしゃいます。
また、「最初から家賃交渉をしてくる方には、できれば入ってほしくない」という家主様も一定数いらっしゃいます。
もちろん反対に、具体的に申込みをしていただけるのであれば、多少の条件交渉には応じますよ、という方もいます。ここは家主様によって、本当に考え方が違います。
だから私は、少し家賃を下げれば決まりそうな物件であっても、募集開始と同時に何でも家賃を下げればいいとは考えていません。
その物件を本当に借りたい方であれば、まず問い合わせをして、実際に物件を見に来られるはずです。
そして、「この物件でお店をやりたい。ただ、事業計画上、もう少しだけ賃料を相談できないでしょうか」となった段階で、初めて家主様へ相談する。私はその順番の方が自然だと思っています。
約20%の値下げをお願いされたこともあります
過去には、適正な募集賃料に対して、約20%の値下げを希望されたこともあります。
もちろん、募集賃料そのものが相場より明らかに高いのであれば話は別です。
でも、坪単価や周辺相場と比較して適正な賃料だった場合、私はそのまま家主様に「2割下げてください」とは持っていきません。
単純にその方が相場をご存じないのであれば、「この地域の相場はこれくらいです」「坪単価で考えると、この物件の募集賃料は決して高くありません」と、まず根拠を示して説明します。
それを理解していただいたうえで、それでも根拠なく大幅な値下げだけを求められるのであれば、お断りすることもあります。
過去には、過度な条件交渉に応じなかったことで、かなり厳しい言葉をいただいたこともありました。
それでも、契約を成立させたいからといって、家主様に無理なお願いをするのは違うと思っています。
家賃交渉そのものが悪いわけではありません
ここは誤解してほしくないところです。私は、家賃交渉をすること自体が悪いとはまったく思っていません。
実際、私から家主様に交渉することもあります。
例えば、事業計画を一緒に確認していて、「この賃料だと、計画上どうしてもこの部分が予算を超えてしまう」ということが分かれば、交渉する理由があります。
そういう場合には、家主様へいきなり金額の話だけをするのではなく、まず借主様についてお話しします。
どんな事業をされるのか。これまでどんな経験を積んでこられたのか。なぜこの場所で開業したいのか。
そのうえで、「事業計画と照らし合わせると、どうしてもこの部分が少し予算を超えてしまいます。可能であれば、賃料についてご相談いただけないでしょうか」とお願いします。
そして私自身が、「この方なら長く商売を続けていただけそうだ」と感じているのであれば、「長く続けていただけるお仕事だと思いますので、家主様にとっても良いご縁になると思います。ぜひご検討をお願いします」というところまでお伝えします。
必要なら、家主様に「一度会ってみませんか」と言うこともあります
通常のテナント契約で、契約前に家主様と借主様が面談するケースは、それほど多くありません。
ただ、私が必要だと感じた場合には、「いいお客様だと思います。一度会ってみませんか」と家主様に提案することもあります。
その場合、借主様にも、きちんとした格好でお会いすることをおすすめします。
見た目だけで人を判断するという話ではありません。これから家主様の大切な不動産を借りて、そこで長く商売をしていくわけです。「この方なら安心して貸せそうだな」と思っていただくことも、大切なことだと思います。
家主様にとっても、良い方が長く借りてくださることは嬉しいことです。だからこそ、単純な金額だけではなく、「誰が借りるのか」も交渉材料の一つになると私は考えています。
「家賃交渉はするべき」が一人歩きしていないでしょうか
私が少し気になっていることがあります。
ハウツー本やインターネットの記事などで、「店舗を借りるときは家賃交渉をするべき」という言葉を見ることがあります。
もちろん交渉できるケースはあります。
ただ、その言葉だけが一人歩きして、「とりあえず値下げを言ってみた方が得」となってしまうのは、少し違うのではないでしょうか。
これから独立開業する方は、自分自身も商品やサービスに価格をつけることになります。
例えば、自分が一生懸命考えて決めた商品の価格に対して、「とりあえず20%安くしてください」と言われたら、どう感じるでしょうか。
簡単に、「いいですよ」とは言えないと思います。家賃も同じだと私は思っています。
家賃を下げてもらえることは「当たり前」ではない
家賃が1万円下がれば、借主様にとっては毎月1万円の固定費削減になります。年間なら12万円。5年間借りれば60万円です。
そう考えると、家主様が賃料を下げてくださるということは、決して小さな話ではありません。
だから私は家主様へ交渉するときも、「下げてもらって当然」という気持ちではお願いしません。
きちんと理由を説明して、「この方なら長く借りていただけると思います。家主様にとっても良いお話になると思いますので、お願いできないでしょうか」という気持ちで交渉します。
そして家主様が応じてくださったのであれば、借主様にも、そのありがたさは分かっていただきたいと思っています。
もちろん、家主様側の条件についてもお伝えします
ここまで書くと、私が家主様側に立っているように見えるかもしれません。でも、そういうわけではありません。
例えば私が過去の取引を知っていて、更新や再契約の際に大きな条件変更があったことを把握しているのであれば、その事実は借主様にもきちんとお話しします。
家主様にも事情がある。借主様にも事情がある。どちらか一方の条件を通すことが、仲介会社の仕事ではないと思っています。
契約した後も、家主様と借主様の関係は続いていきます。だからこそ、最初の条件交渉の段階から、どちらか一方に無理をさせて契約を成立させることは、できるだけ避けたいと思っています。
「この人と契約してよかった」と双方に思ってもらいたい
空室が続いているから、家賃を下げる。借りたいから、家賃を交渉する。それ自体が正しいとか、間違っているという話ではありません。
大切なのは、その交渉にきちんとした理由があるかどうか。
そして、家主様にとっても、借主様にとっても、「この人と契約してよかった」と思える契約になること。
私は、その間に立って話を整理し、お互いが納得できるところを探すことも、仲介会社の大切な仕事だと思っています。
ちなみに――。
家賃が下がれば、賃料を基準に計算する当社の仲介手数料も少し下がります😅
家主様から、「上領さんの手数料も下がるのにね」と心配していただくこともあります。
ありがとうございます。
でも、必要だと思った交渉はちゃんとします^_^
それも含めて、仲介の仕事だと思っています。

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